重要事項説明書とは

(1) 定義

重要事項説明書(略称:重説)とは、不動産取引において買主または借主が契約を締結する前に、不動産の状況や契約内容に関する重要な情報を記載した文書のことです。
宅地建物取引業法に基づき、宅地建物取引士(宅建士)が説明し、書面を交付することが義務付けられています。

(2) 目的

  • 契約後のトラブル防止

  • 買主・借主の情報不足による不利益防止

  • 不動産取引の透明性確保


2. 説明のタイミングと方法

(1) タイミング

重要事項説明は、売買契約または賃貸借契約を締結する前に行う必要があります。契約締結後に説明しても意味がなく、法律違反となります。

(2) 説明者

必ず宅地建物取引士の資格を持つ者が、対面またはオンラインで説明し、取引士証を提示した上で行います。
最近ではIT重説(オンラインでの重要事項説明)も認められています。


3. 重要事項説明書の主な内容

重要事項説明書には、以下のような項目が含まれます。

(1) 物件に関する情報

  • 所在・地番・家屋番号

  • 登記記録に関する事項(所有者・抵当権など)

  • 区分所有建物の場合の共用部分・専有部分の範囲

  • 私道負担の有無や通行権

(2) 法律上の制限・インフラ状況

  • 都市計画区域・用途地域・建ぺい率・容積率

  • 建築基準法、農地法、文化財保護法などの制限

  • 水道・電気・ガス・排水設備の状況

(3) 契約条件に関する事項

  • 売買代金・賃料・敷金・礼金・更新料などの金銭条件

  • 契約解除条件や違約金

  • 契約期間(賃貸借の場合は普通借家・定期借家の区別)

  • 引渡時期・現況確認・特約事項

(4) 管理・負担に関する事項(マンション・区分所有の場合)

  • 管理費・修繕積立金

  • 管理規約・使用細則

  • 長期修繕計画の有無

(5) 瑕疵・事故履歴に関する情報

  • シロアリ被害、雨漏り、耐震診断結果

  • 事故物件(心理的瑕疵)の場合、その旨を説明する必要があるケースもある。


4. 重要事項説明書の法的根拠

宅地建物取引業法第35条に基づき、宅地建物取引業者は、取引に先立ち重要事項を説明する義務があります。
違反すると、宅建業者に対して行政処分(指示・業務停止・免許取消)や罰則が科される場合があります。


5. 説明を受ける際の注意点(買主・借主側)

(1) 内容を理解することが重要

  • 難解な法律用語や専門用語が多いため、理解できない点は必ず質問しましょう。

  • 「将来の再建築は可能か?」「土地境界に争いはないか?」など、疑問点を事前に解消することが大切です。

(2) 書面の控えを必ず受領

  • 重要事項説明書は契約後もトラブル時の証拠になります。必ず控えを受け取り保管しましょう。

(3) 物件現況と照合する

  • 書面に記載されている内容と現地の状況が一致しているかを確認しましょう。


6. よくあるトラブル事例

  1. 境界未確定問題
    境界が曖昧なまま購入し、後で隣地所有者と争いになるケース。

  2. 用途制限違反
    市街化調整区域で住宅が建てられない土地を誤って購入。

  3. 心理的瑕疵
    過去に自殺や火災があったことを説明されず、契約後に判明しトラブルになるケース。


7. 重要事項説明のIT化(IT重説)

近年、国土交通省のガイドラインにより、**オンラインでの重要事項説明(IT重説)**が認められています。

  • スマホ・PCを用いて遠隔で説明を受けることが可能。

  • 宅建士が画面越しに重要事項を説明し、電子署名で書面交付が行われる。

  • 特に遠方の契約者やコロナ禍以降で活用が拡大しています。


8. まとめ

  • 重要事項説明書は、不動産取引の安全性を確保するために不可欠な文書であり、宅地建物取引士が法的に説明義務を負います。

  • 契約前に不動産の権利関係・法規制・物件状況などを詳細に確認でき、後のトラブルを防ぐことができます。

  • 説明を受ける側(買主・借主)は、不明点をそのままにせず確認し、説明内容と現地状況を照合することが重要です。