(1) 外国人の不動産購入は可能
日本では、外国籍であっても在留資格や国籍による制限なく不動産を購入できます。住居用・投資用・別荘用など、購入目的に制限はなく、法人や個人での購入も可能です。これはアジア諸国の中でも比較的自由度が高い特徴です。
(2) 居住資格は付与されない
不動産を購入しても自動的に日本で居住する権利(在留資格)は得られません。長期滞在や移住を希望する場合は、別途ビザ(経営管理ビザ、投資・経営ビザ、特定活動ビザなど)を取得する必要があります。
2. 不動産購入の流れ(海外在住者の場合)
(1) 購入物件の選定
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不動産会社(仲介業者)を通じて希望条件(立地・価格・用途など)を提示し、物件を選定します。
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日本語が不安な場合は、中国語・英語対応可能な不動産業者を利用することがおすすめです。
(2) 価格交渉と買付申込書
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購入したい物件が決まったら、「買付申込書」を提出します。
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この段階で価格や条件交渉を行います。
(3) 売買契約の締結
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不動産会社が重要事項説明を行い、売買契約書に署名・押印します。
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海外在住者は日本に来日して署名するか、委任状を使って代理人に依頼する方法があります。
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手付金(通常物件価格の5~10%程度)を支払います。
(4) 決済・引渡し
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残代金を支払い、所有権移転登記を実施します。
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通常は司法書士が登記申請を代理し、所有権が買主に移転します。
3. 必要書類一式
(1) 個人で購入する場合
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パスポート:本人確認書類。
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印鑑証明書またはサイン証明書
日本に住民票がない外国人は、居住国での公証(Notary Public)や在外日本大使館・領事館が発行するサイン証明書を用意します。 -
住所証明書:現住所を証明する書類(公共料金請求書や外国の住民票など)。
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委任状(代理人を立てる場合):日本語訳付きで作成。
(2) 法人で購入する場合
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法人登記簿謄本(外国法人の場合は登記簿抄本)
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定款
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代表者のパスポートとサイン証明書
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印鑑証明または署名証明書
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法人の住所証明書
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委任状(代理人利用時)
(3) 登記関連書類
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住民票(非居住者は不要だが、住所証明として海外居住証明を使用)
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印鑑登録証明書またはサイン証明書
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委任状(司法書士に登記手続を依頼する場合)
4. 資金決済方法
(1) 銀行口座の開設
日本に非居住者として口座を開設するのは困難な場合が多いため、以下の方法が選ばれます。
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海外送金で直接決済
→ 売主指定口座に海外送金する。為替リスク・送金手数料に注意。 -
日本国内の代理人の口座利用
→ 信頼できる代理人を立て、国内で決済。
(2) ローン利用
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日本に住民票がない場合、国内銀行ローンはほぼ不可。
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外資系銀行や居住国の金融機関からのローン利用、あるいは現金購入が一般的です。
5. 注意点
(1) 税金の理解
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取得時:印紙税、登録免許税、不動産取得税。
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所有時:固定資産税・都市計画税。
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売却時:譲渡所得税(短期39%、長期20%)。
海外居住者でも日本国内で不動産所得がある場合は日本で納税義務が発生します。
(2) 管理体制
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海外在住者は物件管理が困難なため、管理会社との契約が必須。
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賃貸運用する場合は、管理委託料(賃料の3〜5%)が一般的。
(3) 為替リスク
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海外送金時の為替変動により購入コストが変動する可能性があるため、契約から決済までの間は注意が必要。
(4) ビザ取得について
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不動産購入自体はビザ取得条件になりませんが、経営管理ビザ・投資ビザを取得して移住を考えるケースでは、不動産所有実績が間接的に信用材料となる場合もあります。
まとめ
日本に在住していない外国人でも、日本の不動産は自由に購入可能です。ただし、サイン証明書・住所証明・委任状など、日本国内居住者には不要な追加書類が必要になります。さらに、銀行口座や住宅ローンの利用は制約が大きく、現金決済または海外金融機関のローン利用が中心となります。税制や管理体制にも注意し、専門家(司法書士・税理士・不動産業者)のサポートを受けながら進めることが、安全かつスムーズな取引につながります。