近年、東京をはじめとする都心部の不動産価格高騰の大きな要因のひとつとして、外国人投資家による積極的な買い入れが挙げられてきました。特に中国からの資金流入は顕著であり、国内の需要だけでは説明できない価格上昇の背景には、こうした海外マネーの存在が大きく影響していると考えられます。
しかし、2025年10月以降、日本政府は外国人に関する経営管理ビザの取得条件を大幅に厳格化する方向性を打ち出しています。新しい政権も外国人政策に対して強硬な姿勢を示しており、この流れは今後も継続するとみられます。ビザ取得のハードルが上がれば、日本での事業展開や居住を目的とした投資が難しくなり、結果として不動産購入の動機も弱まる可能性が高いでしょう。
その一方で、中国本土では景気の悪化が進み、国内で投資先を見つけることが困難な状況が続いています。そのため、資産防衛や安全な投資先を求めて海外不動産に資金を振り向けてきた流れがありますが、日本に対する投資環境が厳格化すれば、そのマネーがどこへ流れるのかは不透明になります。アメリカや欧州諸国も移民や外国人投資に慎重な政策を取っているため、中国からの巨額資金の受け皿が見つかりにくいという構造的問題が浮き彫りになっています。
こうした状況下で予想されるのは、日本国内の一部の外国人投資家が保有物件を売却し、現金化を進める動きです。投資の継続に不安を覚え、将来的な規制強化を見越してリスク回避に動くことは自然な流れとも言えるでしょう。その結果、都心不動産市場は一時的な売り圧力にさらされ、価格の下落リスクを抱える可能性があります。
結局のところ、日本の不動産市場における外国人投資の役割は小さくないものの、政策動向ひとつで流れが大きく変化し得ることを今回の動きは示しています。外国人資金が減退すれば、国内の需要と供給のバランスに戻る一方で、都心部の高止まりしていた価格が調整局面に入る可能性もあります。今後は、日本の政策判断と世界的な投資マネーの動向が複雑に絡み合い、都心不動産市場の行方を左右していくことになるでしょう。