不動産売買に関する法律と税制

1. 不動産売買に関係する主要法律

(1) 宅地建物取引業法(宅建業法)

不動産売買・賃貸の仲介や代理を業務として行うには、宅地建物取引業者免許が必要です。宅建業法では、取引の公正・安全を確保するため、以下の義務が定められています。

  • 重要事項説明義務:契約前に宅地建物取引士が物件の権利関係や法令制限など重要事項を説明し、書面を交付すること。

  • 37条書面交付義務:売買契約後、契約内容を記載した書面を交付すること。

  • 手付金保全措置:未完成物件などで多額の手付金を受領する場合、保証制度の利用が義務付けられる。

(2) 民法

売買契約の基本ルールは民法で規定されています。

  • 所有権移転:売買契約が成立すると、原則として所有権が買主に移転します。

  • 瑕疵担保責任(契約不適合責任):引渡した物件に欠陥があった場合、売主は一定の期間、修補・代替・損害賠償に応じる義務があります(2020年の民法改正で「契約不適合責任」として整理)。

  • 危険負担:引渡し前に物件が滅失した場合のリスク負担なども民法で定められています。

(3) 建築基準法・都市計画法

土地の用途・建ぺい率・容積率など、建築に関する制限を定める法律です。用途地域などにより建物の種類や規模が制限されるため、購入時の調査が不可欠です。

(4) 不動産登記法

不動産の権利(所有権、抵当権など)を登記簿に記録することで、第三者に対して権利を主張できます。所有権移転登記を行うことは、買主の権利保全に不可欠です。


2. 不動産売買に関する税制

不動産取引には、取得時・保有期間・売却時にさまざまな税金が発生します。

(1) 不動産取得時にかかる税金

  • 印紙税:売買契約書に課されます。契約金額に応じて数千円〜数十万円。

  • 登録免許税:所有権移転登記を行う際に課税されます。税率は原則2.0%(軽減措置あり)。

  • 不動産取得税:不動産取得時に都道府県が課税します。原則は固定資産税評価額の3〜4%。住宅用の軽減措置がある場合もあります。

(2) 保有期間にかかる税金

  • 固定資産税:土地・建物の所有者に毎年課税されます。課税標準額×1.4%が基本税率。

  • 都市計画税:市街化区域内の土地・建物に課税。税率は最大0.3%。

(3) 売却時にかかる税金(譲渡所得課税)

不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合、所得税・住民税が課税されます。

  • 短期譲渡所得:所有期間5年以下 → 課税率39%(所得税30%、住民税9%)

  • 長期譲渡所得:所有期間5年超 → 課税率20%(所得税15%、住民税5%)

  • 3,000万円特別控除:居住用財産を売却した場合、一定条件を満たせば3,000万円までの譲渡所得控除が可能です。

(4) 相続・贈与時の税金

  • 相続税・贈与税:土地・建物を相続・贈与した場合、評価額に応じた税金が課されます。

  • 相続税評価額は路線価方式や倍率方式により算出され、市場価格より低く評価されることが多い点が特徴です。


3. 実務上の注意点

  • 契約内容の精査:特約条項、ローン特約、引渡時期などを慎重に確認すること。

  • 税務計画:売却や購入のタイミングにより課税額が大きく変わるため、税理士等の専門家に相談することが推奨されます。

  • 登記・権利関係:未登記物件や抵当権付き物件などは権利関係のトラブルに注意が必要です。

  • 法令制限の確認:都市計画や建築基準法の規制により、利用方法が制限される場合があるため事前調査は不可欠です。


まとめ

不動産売買は高額であり、法律や税制の影響を大きく受けます。契約や税務の誤解は大きな損失につながるため、宅地建物取引士・司法書士・税理士などの専門家との連携が重要です。
不動産の購入・売却を検討する際には、取引の流れだけでなく、関連法規と税務の知識を押さえておくことが成功の鍵となります。