――円安と安定市場が呼び込む海外マネー――

近年、東京の不動産市場において外国人投資家の影響力が年々強まっている。
業界関係者の間では「不動産の売却先の約6割が外国人投資家である」という話も聞かれるほどで、この傾向はすでに一部の専門家だけでなく、業界全体に広く知られる現象となっている。
かつては日本国内の富裕層や法人が中心だった不動産投資市場に、今や海外からの資金が本格的に流入し始めているのだ。

では、なぜ外国人投資家がこれほどまでに東京を注目しているのだろうか。
主な理由として、①円安による「日本不動産の割安感」、②市場の安定性、③高い収益率、④投資ビザや移住需要の高まり、の4点が挙げられる。


① 円安が生み出す「日本大特価」

最大の要因は、近年続く円安である。
為替レートが1ドル=110円の時期と比べ、現在の1ドル=150円水準では、外国人投資家にとって日本の不動産は実質的に約30%安く購入できる計算になる。
ドル、香港ドル、人民元などの外貨を保有する投資家から見れば、まさに“今が買い時”という状況だ。
とりわけ東京の中心部――港区、渋谷区、千代田区などの高級地――では「高品質な物件を割安で購入できる」として、積極的な取得が進んでいる。


② 世界的に見ても安定した市場環境

次に挙げられるのが、東京市場の安定性である。
政治的・経済的なリスクが低く、治安も良い。さらに、日本の法律では外国人による不動産の購入・所有が自由に認められており、外国人でも法人でも名義で登記できる点が大きな魅力となっている。
加えて、日本の賃貸市場は空室リスクが比較的低く、長期的に安定した収益が見込める。
欧米や中国の不動産市場が不安定化するなか、「資産の安全な避難先」として東京を選ぶ動きが加速しているのは自然な流れといえる。


③ 高い利回りと堅調な賃貸需要

投資リターンの面でも、東京は他のアジア主要都市を上回る。
香港・上海・シンガポールの不動産利回りが2〜3%前後であるのに対し、東京の平均利回りは4〜6%と比較的高水準を維持している。
特に、港区・渋谷区・新宿区といったエリアでは、外国人駐在員向けの高級賃貸需要が安定しており、長期的な賃貸収入を確保できる点で人気が高い。
この「安定したキャッシュフロー」と「値上がり期待」の両立こそ、外国人投資家が東京を選ぶ大きな理由である。


④ 投資ビザ・移住ニーズの増加

最近では、単なる投資目的だけでなく、「日本に長期滞在したい」「家族で移住したい」という動機から不動産を購入するケースも増えている。
特に中国の投資家の間では、
・不動産取得による経営・管理ビザの申請
・日本の医療保険制度への加入を見据えた老後準備
・子女教育を目的とした学校近隣の住宅購入
といった実需型ニーズが急増している。
さらに、香港の政治・経済情勢の不安定化を背景に、資産を日本へ分散させる動きも目立つ。


外国人投資家が好む物件タイプ

現在、外国人投資家が購入している物件の特徴には、以下のような傾向がある。
・1億〜10億円規模の一棟マンション・ビル
・港区、渋谷区、新宿区、中央区などの都心一等地
・ホテル・リゾート施設(特に北海道・沖縄)
・民泊運営が可能な収益型物件

特にホテルや民泊関連の不動産は、インバウンド需要の本格回復を見越して旺盛な買いが入っている。
訪日外国人観光客の増加が続く限り、こうした物件の価値はさらに高まると予測される。


日本人投資家の今後の戦略とは

一方で、日本人投資家は慎重な姿勢を崩していない。
しかし、円安局面で物件を購入し、将来的に円高に転じた際に売却して為替差益を得る、あるいは海外投資家への転売によるキャピタルゲインを狙うなど、戦略的な動きが求められる時期に来ている。
海外資金の流入が進む今こそ、柔軟に市場動向を読み取り、長期的な視点で資産形成を考えることが重要である。


まとめ:外国資金が支える東京不動産市場の新時代

・中古・転売不動産の約60%を外国人投資家が購入
・円安による割安感で海外マネーが流入
・政治・経済ともに安定した市場構造が投資先として魅力
・利回りが高く、賃貸需要が安定
・投資ビザ・移住目的の購入も拡大中

こうした流れから見ても、今後の東京不動産市場は引き続き外国資金の流入が続くと見られる。
特に、港区・渋谷区・新宿区といった都心の高級物件、ホテル・リゾート関連不動産、そして一棟ビル・マンションなどが、今後も海外投資家の注目を集めるだろう。

日本の不動産オーナーにとっても、外国人投資家との連携や情報共有をより重視する時代が到来している。
東京不動産市場は、もはや日本だけの市場ではなく、世界の投資家が競い合う国際的なステージへと進化しているのだ。

By admin