近年、中国において教育を目的とした日本への移住が目立つようになっています。中国国内では小学校から大学受験まで、熾烈な進学競争が存在し、子どもたちは勉強や学校環境において大きなストレスを抱えています。そうした状況の中で、保護者は「より自由度の高い教育環境」を求め、子どもとともに日本へ移住するケースが増加しているのです。
特に注目すべきは、子どもの小学生・中学生時代から日本で学ばせることにより、帰国後に「帰国子女枠」として中国国内の一流大学を受験できる可能性が高まる点です。そのため、一時的な留学ではなく、家族ごと移住を選択するという戦略的な教育移住が広がっています。
しかし、日本には「親子留学」という制度が明確に存在するわけではありません。実際には、子どもを留学させたい親が自ら日本で会社を設立し、経営管理ビザを取得することで同行するという形が一般的です。母親が経済的に自立している場合や、自らビジネスを営んでいる場合、この方法が利用されることが多く、結果として日本の不動産市場でも教育目的での購入や賃貸需要が高まりました。
一方で、経営管理ビザを「子どもの教育のため」という本来の目的以外で活用することに対しては、制度上の解釈が難しく、行政の判断によっては厳しく見られるケースもあります。さらに2025年10月以降、日本政府は経営管理ビザの条件を厳格化する方針を示しており、資本金の大幅引き上げや申請要件の強化が検討されています。これにより、中国人家庭が教育目的で移住する際のハードルは格段に高くなることが予想されます。
こうした背景を踏まえると、教育移住という潮流が今後縮小していく可能性もあります。同時に、日本での不動産購入や投資を通じた移住モデルも、従来のような広がりを見せなくなるかもしれません。今後は、日本政府の外国人政策の動向を注視しながら、教育を重視する家庭がどのような選択を取るかを見極める必要があるでしょう。
教育目的の移住は、単に家庭の問題にとどまらず、日本のビザ政策、不動産市場、さらには日中間の人材交流や国際教育のあり方を映し出す重要な社会現象となっています。