近年、東京の不動産市場は長期的な価格上昇を続けてきましたが、現在はその「頂点」に差し掛かりつつあるとの見方が強まっています。特に外国人投資家の間では、これまで旺盛であった購入意欲に一定の減速感が見られるようになりました。背景には、物件価格の高騰に加え、日本政府による外国人政策の厳格化が強調されるようになり、今後の投資環境の変化に対する警戒心が高まっていることが挙げられます。

これまで外国人投資家にとって東京の不動産は、安全性と収益性を兼ね備えた魅力的な資産でした。円安基調も追い風となり、多くの資金が流入しましたが、足元では「どのようにして利益確定、すなわち売却していくか」という課題が意識される局面に移りつつあります。こうした状況は、ある意味において東京不動産市場が「バブルの頂点」に近づいていることを示唆しています。

さらに、投資対象としての不動産に対する見直しも進んでいます。特に注目すべきは、不動産投資が外国人にとって安定的にビザ取得の手段とはならないという点です。過去には「不動産購入=在留資格への近道」と捉える向きもありましたが、制度上は不動産所有が直接的にビザ更新や長期在留に結び付くものではなくなっています。そのため、近年では投資の方向性を転換し、不動産ではなく 企業買収や事業投資 へとシフトする外国人投資家が増加しています。これは、日本国内における企業再編や後継者不在企業への関心とも合致しており、今後の投資潮流として注目されます。

もっとも、外国人の都心部への流入そのものが止まる兆しは見えません。インターナショナルスクールや高級商業施設が集中する港区や渋谷区、中央区などは依然として根強い需要を維持しており、価格が急落する可能性は限定的と考えられます。ただし、今後は外国人需要が都心部に集中するのではなく、交通利便性の高い 城南・城西エリア、さらには郊外の広域圏へと徐々に分散していく動きが見込まれます。これにより、これまで比較的注目度の低かったエリアにも新たな投資機会が生まれる可能性があります。

総じて、東京不動産市場は依然として高値圏にありますが、投資家の視線は確実に「出口戦略」と「分散投資」へと移行しつつあります。今後は、不動産単独ではなく企業投資や地域分散を組み合わせた戦略が、外国人投資家にとって重要な選択肢となるでしょう。

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