(不動産コンサルタント視点からの考察)

私は東京で不動産会社を経営し、中国企業の日本進出や店舗出店を支援する業務を長年行っています。特に近年は、都心部への出店を希望する中国企業やアジアのブランドからの相談が急増しており、彼らの成功の鍵を握るのが「立地の選定」と「ターゲット層の見極め」です。私はそのために、定期的に東京の主要商業エリアを歩き、実際の歩行者動態を観察するようにしています。

先日、表参道を歩いていて強く感じたのは、今やこの街を支えているのはほとんどが外国人観光客であるという現実でした。平日の午後にも関わらず、通行人の八割以上が外国人であり、中国・韓国・東南アジアだけでなく、欧米からの旅行者も多く見られました。彼らの多くはブランドショップの紙袋を手にしており、明らかに「買い物」を目的に訪れている様子でした。
一方で、日本人の姿は極端に少なく、特に若年層の買い物客が減少していることが印象的でした。これは表参道だけでなく、銀座、渋谷、浅草、上野といった他の観光地型商業エリアでも同様の傾向が見られます。

もし仮に、外国人観光客の訪日が止まればどうなるでしょうか。私は確信をもって言えますが、東京の多くのショッピングストリートは瞬く間に閑散とし、店舗の売上は急激に落ち込むでしょう。表参道や渋谷といった「東京を代表する商業地」は、いまや日本人よりも圧倒的に外国人観光客によって支えられています。つまり、これらの地域はすでに「日本人向けの街」ではなく、「世界の観光客のための街」へと変化しているのです。

この変化の背景には、日本人の購買行動の構造的な変化があります。ECサイトやモバイルショッピングの普及によって、日本人の多くがオンラインで買い物を済ませるようになり、実店舗での購買は大幅に減少しました。特にファッションや化粧品、雑貨などの分野では、ネットでの比較・購入が主流になり、わざわざ都心まで出かけて買い物をする人は少なくなっています。
その結果、東京の商業地において「リアルな購買行動を支えている」のは、訪日外国人観光客という構図が出来上がっているのです。

ビジネスの観点から見れば、これは非常に重要な事実です。もし東京で店舗を開設するなら、外国人観光客の動線を無視することは致命的な失敗につながります。今や東京の小売業・飲食業の成功は、「外国人をどれだけ集客できるか」にかかっていると言っても過言ではありません。
逆に言えば、外国人観光客の需要を的確に捉えたビジネスモデルを構築できれば、東京での店舗運営は非常に高い収益性を確保できます。

私たちがクライアントの出店支援を行う際も、この点を最も重視します。単に「地価が高い」「人通りが多い」という理由だけでは、店舗の成功は保証されません。重要なのは、どの国の観光客がどの時間帯に多く歩いているか、どのエリアが撮影・発信スポットとして人気か、どの店舗にどの層が滞在しているかといった、行動データの蓄積と分析です。
特に中国企業が日本市場に進出する場合、現地の消費者ではなく、「日本に来る外国人観光客をターゲットにする」という視点を持つことが成功の鍵になります。

今の東京は、まさに「グローバル観光都市」としての姿を色濃くしています。街を歩く人々の言語は日本語よりも英語、中国語、韓国語が多く、店舗スタッフも多言語対応を前提とした運営体制を整えています。
この現実を冷静に直視すれば、東京の商業地における店舗経営の本質が見えてきます。すなわち、外国人観光客の動向を読むことこそが、今後の東京ビジネスの最重要課題であり、その理解なしにはどんなビジネスモデルも成立しないということです。

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