不動産を購入・相続・贈与などにより取得した際には、複数の税金が課されます。これらは一度だけ発生する税金と、取得後に毎年課される税金に分けられます。
(1) 印紙税
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概要:売買契約書などの課税文書に対して課税される税金。 
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金額:契約金額に応じて異なり、数千円~数十万円。 
 例)3,000万円の不動産売買契約 → 印紙税は2万円(軽減措置適用時)。
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ポイント:印紙を貼付し消印することで納税。軽減措置が時限的に実施されている場合があるため要確認。 
(2) 登録免許税
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概要:所有権移転登記や抵当権設定登記を行う際に必要な税金。 
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税率: - 
所有権移転登記(売買):固定資産税評価額 × 2.0%(住宅用は1.5%に軽減) 
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所有権保存登記(新築時):固定資産税評価額 × 0.4%(住宅用は0.15%に軽減) 
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抵当権設定登記:債権金額 × 0.4% 
 
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ポイント:評価額は市場価格より低く設定されている場合が多く、実際の負担は市場価格より軽くなることが多い。 
(3) 不動産取得税
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概要:土地や建物を取得した際に都道府県が課税する税金。 
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税率:原則4%(住宅は3%に軽減される場合あり)。 
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課税標準:固定資産税評価額。 
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軽減措置:住宅用土地・住宅用建物には面積要件や居住要件を満たせば軽減制度がある。 
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納付時期:取得後3~6か月程度で納税通知書が届く。 
(4) 消費税
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概要:土地は非課税だが、建物(特に新築)や事業者が売主の中古物件には消費税がかかる。 
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税率:10%(2025年時点)。 
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ポイント:個人間の中古住宅取引では通常非課税。 
(5) 毎年課税される固定資産税・都市計画税
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固定資産税:毎年1月1日時点の所有者に課税。税率は評価額×1.4%(標準税率)。 
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都市計画税:市街化区域内の土地・建物に課税。税率は最大0.3%。 
2. 不動産売却時の税金
不動産を売却して利益が出た場合、その利益(譲渡所得)に対して税金が課されます。
(1) 譲渡所得税
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課税対象:譲渡価格(売却額)-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得 
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取得費:購入代金、仲介手数料、登録免許税、印紙税、リフォーム費用など。 
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譲渡費用:売却時の仲介手数料、測量費用、解体費用など。 
(2) 税率(所有期間で変動)
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短期譲渡所得(所有期間5年以下) 
 → 所得税30%+住民税9%=39%
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長期譲渡所得(所有期間5年超) 
 → 所得税15%+住民税5%=20%
 ※所有期間は売却した年の1月1日現在で判定。
(3) 居住用財産の特例
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3,000万円特別控除:居住用財産を売却した場合、譲渡所得から3,000万円まで控除。 
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軽減税率の特例:所有期間10年以上の居住用財産に適用。6,000万円以下の部分に14%(所得税10%、住民税4%)の税率が適用。 
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買換え特例:一定条件を満たす場合、譲渡益の課税を繰り延べできる。 
(4) 相続・贈与で取得した不動産の売却
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相続・贈与で取得した不動産を売却する場合、取得費加算の特例が適用され、相続税額の一部を取得費に加算でき、課税所得を圧縮できます。 
(5) 消費税
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個人が居住用として利用していた建物を売却する場合、通常は非課税。 
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事業用物件(賃貸マンション一棟など)を事業者として売却する場合は課税対象となる場合がある。 
3. 税務上の注意点
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取得費不明の場合 
 古い不動産では取得時の資料が残っていない場合がある。その場合は概算取得費(譲渡価格の5%)で計算されるが、税負担が増えるため注意。
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特例の適用には申告が必要 
 3,000万円控除などは確定申告を行わないと適用されない。
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売却損の繰越控除 
 居住用財産の売却損については、翌年以降の所得と相殺できる特例もある。
まとめ
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取得時:印紙税・登録免許税・不動産取得税・消費税などがかかり、住宅用の軽減措置が多数存在。 
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売却時:譲渡所得に課税。所有期間や居住用か否かで税率や控除が変わる。 
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いずれも事前計画と書類管理が重要であり、特例の活用や適正申告により大きく税負担を軽減できます。 
